vol.26「ドキュメント吾妻山」
vol.26「ドキュメント吾妻山」
今年も、吾妻山に菜の花の季節がやってまいりました。澄んだ空気にきりりと引き締まった富士山や箱根・丹沢の遠景だけでも圧巻なのに、そこに海の青と黄色い花たちが色を添えます。今日も、この絶景を一目見ようと山を目指すたくさんの人々とすれ違いました。ほんの束の間、この町はプチ観光地に変身です。
話は変わりますが、「ドキュメント72時間」というTV番組をご存じでしょうか?お店とか、公園とか、温泉とか、どこか一か所にスポットを当てて72時間定点(?)観察する番組です。普段は気に留めない日常のごくごく平凡な一コマを72時間ぶん拾い集めて、30分にギュギュっとまとめています。通りすがりの人たちは、それぞれの人生というドラマを持っていて、そんなちっぽけなドラマをそっと包み込むように、店があり、街があり、時間が流れていく。それを見ていると、人間という生きものも、まんざら捨てたもんじゃないなあと思えてくる。この番組が好きだという人を見つけると、ちょっとだけ嬉しくなります。
吾妻山の山頂に、大きなエノキという木があってですね。そのエノキがまるでそこに設置したカメラのように、見ているのですよ、何もかも。そしてそして何を隠そう、私は時々、そのエノキからいろいろなお話を聞かせてもらっています。吾妻山の頂上に、入れ替わり立ち代わりやってくる人間たち、動物たち、季節のうつろいで変わっていく植物たちのお話を。(これから出てくる人たちは、私もよくお見かけするので、間違いなく本物です。)
暗闇の中、躓きながら登ってきて、日の出前のピンクの空をカメラに収める人。望遠鏡を覗いて洋上に浮かぶ豪華客船を特定する人。遠く大山山頂から手鏡反射光でシグナルを送る仲間に歓声を上げる人。誤嚥防止の発声練習をするために毎朝欠かさず上ってくる人。空手をする人。子供たちにマジックを見せてあげる人。オカリナを吹く人。カラスと話す人。石の上で瞑想する人。ギターを弾いて誕生日の友人を祝う人。そうそう前述の番組のエンディング曲をウクレレで弾いて歌ってくれたお姉さんもいました。
何気ない話だけど、なんだか抱きしめたいくらいかわいい営みがそこにあります。できることなら私が、番組のディレクターになってまとめてみたいくらいです。場所は吾妻山山頂広場。サブタイトルは「エノキはみんな知っている」てな感じでしょうか?
時間帯も限られた上に、ここ最近の内容だけでも、ババーッとこんなもんですから、春夏秋冬、昼夜問わずウゴメクものたちの営みを編集したら、壮大なドキュメンタリー作品に仕上がること間違いなしです。
許可さえ下りれば、蔵門製作のこの番組にも、同じエンディング曲を使わせていただきたいと思います。「♪ちゃんちゃんちゃんちゃん」のメロディーの合図と共に、クライマックスの映像。月光が波の上でキラキラ光る海をバックに、大きなエノキのまわりを狸たちが踊っているシーン。その狸ばやしに合わせて木々たちが枝葉で手拍子しているシーン。
「この場所は、人間だけじゃなくってね。たくさんの命を包み込んでくれてたんだね。」エンドロールが流れます。
いやあ、そんなつもりはなかったんですが、いつしかドキュメント72時間・吾妻山編の制作構想(妄想)に話が飛んでしまいました。(あ、疑っていますね。大丈夫です。素面です。まだ昼間ですから。)こんなワタクシに新年早々、お付き合いいただきありがとうございます。
私のどろんこlifeの原点でもある吾妻山ネタで一年のスタートが切れて、一人勝手に喜んでいるクラモンでした。
いま、まさに汗をふきふき長い階段を上ってきている人たち、頂上で頬張るおにぎりをコンビニで選んでいる人たちに、今年も素敵なドラマが待っていますように。本年もよろしくお願いいたします。
(2023-1-6)












