結婚したら二宮に住もう!

vol.27「ふきの季節」

vol.27「ふきの季節」

桜の花がちらほら咲き始めた頃、道端の無人販売所を通り過ぎようとして「あっ!」と振り返りました。「え~、もう、フキ~?」
♪「季節の変わり目さえ気づかない程、ぼんやりしているあなたに~」という歌があったなあ。
今さっきまで畑でくつろいでいた野菜たちが、お行儀よく並べられた一角から、その歌声が聞こえてくるようです。「フキだよ、フキ!フキの季節だよ~!」

無人販売所の野菜たちに、季節を気づかせてくれた感謝の一礼をしてその場を後にします。そそくさと向かった先は、まだ寒い2月、フキノトウを摘んで春の訪れを噛みしめていた畑の隅っこ。景色もすっかり変わり、葉を茂らせたフキたちがまだかまだかと待っていてくれました。

フキをとって持ち帰り、板ずり、下茹で、皮を剥き、油揚げと炊いて、おかずにします。多めに作って常備菜にするのですが、あっという間になくなるのでまた畑に向かいます。フキを摘む→油揚げと炊く→食べる→フキを摘む。果たしてこれを何回繰り返すことでしょう。おそらく初夏に入ってフキが固くなって歯に繊維が挟まるようになるまで、我が家の食卓にはフキが並び続けます。
 そこまで執拗にフキを食べる理由が「ただ、好きだから」では言葉が足りない気がしています。
登山家の人に向けられた、なぜ山になぜ登るのか?という愚問に、彼らは決まって「そこに山があるから」と答えてかわします。それに近いものがあるのですね。「そこにフキがあるから。」
               ★
 フキを食べ続けるこの時期に必ず思い出すエピソードがあります。
 昔話で恐縮ですが、青森の津軽半島を相棒と二人で自転車をこいでいた時のこと。日没までに麓の集落にたどり着けないと判断した我々は、峠道の空き地に野営をすることに決めて、まだ陽のあるうちからテントを張る準備をしておりました。
そこへ、地元の軽トラが止まり、中から出てきたばあちゃんとその孫らしき子供に声を掛けられました。
「おめ~ら、ミズ、知ってっか?」首を横に振ると、「ついてこい」と先を歩き、さっさと山に分け入っていきました。沢の近くでしょうか?鎌を取り出しこう言います。「こうやって、摘むだ。さあ、摘め。」
ばあちゃんと孫と、旅人二人で30分ほど収穫したでしょうか。テントに戻ると、こんどは「おめ~ら、湯沸かすもん、あっか?」。
言われるまま、鍋にコンロで湯を沸かし、指示を仰ぎます。口数の少ないばあちゃんは、今、取ってきたばかりのミズを湯がいて、皮を剥き「じゃあな」と孫を連れて帰っていきました。四人で採ったミズは全部くれました。醤油があれば良かったのだろうけど、夕飯はそのミズに塩をかけていただきました。
あの、ばあちゃんにはもう会えないだろうけど。あん時の、ミズ(ウワバミソウという山菜ですが、形態は極めてフキに近いです)。一生、忘れられません。もう一度、食べたいなあ。

そうそう、この話にはオマケがあって、夕餉を終えて、寝袋の準備をしていると、また別の軽トラが止まって、おじさんが下りてきて言いました。「おめ~ら、ブヨ、気をつけろ。」キンチョールの缶を置いて行ってくれました。そのあと、暗い山道、車は一台も通らなかったなあ。そのくらい人里離れた場所で受けた人情でした。

津軽の言葉が悲しいくらいに聞きとれないし、口数も少ない人が多くてね。それなのに、もしかしたらそれだからこそ、心の奥底にぽっと火を灯してくれたのかもしれません。そしてじわじわ、こんな風に一生、温め続けてくれるんですね。
そんな昔話を思い出しながら、今日もフキを炊いています。

              ★★
数日前、近所で若い畑女子2人と立ち話していた時ね。
「クラモンさんって、以前、ブログ(どろんこLifeのこと)書いてましたよね。私読んだことあります。」Aさんが言いました。
それを聞いて私の眉が数ミリ、ピクリとしたのに気づいたのでしょう。隣にいたBさんが慌てて言いました。「今も続いてるよー。たま~に、更新されてますよね。」眉が更に数ミリ動いたのは、麦わら帽子の庇をさりげなくずらして、見られなかったようです。
はい、現在も継続中で、たまに更新しております。ちょ~ど、今、書こうかなあと思っていた所でした。
読んでくれたことがあると言ってくれた、ありがたい二人の言葉に背中を押されて、どろんこLife、まだまだ、しつこく続きます。
(2023-4-17)

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