vol.8「ひっかかっているもの」
vol.8「ひっかかっているもの」
先日、畑の仲間に島唐辛子をわけてもらう。二人で「ひとーつ、ふたーつ」と、その実を摘んで、10個数えたところで顔を見合わせ小さくうなずく。大事に持ち帰って、数えてみたら、どうしたことか9個になっている。失くしてしまった1個の行方が心残りだが、気を取り直して、沖縄の調味料コーレーグースを仕込むことにする。酢に唐辛子を漬け込んだだけのシンプルな調味料ゆえ、それに使われるビンは重要なアイテムだ。ビジュアル的にも、機能的にも納得のいく物でなくてはならない。実のところ、唐辛子を摘みながら「そうそう、あれあれ」と、その選定はすでに済んでいた。
知人にサルナシ酒用のサルナシを大量にあげたお礼にもらった、ゴマふりかけのビン。まさに理想にぴったりだ。まだ3分の1くらい残っている、そのゴマを小さなタッパに移してみると、なにやらビンの口に白い錠剤のようなものが半身をビンの外に出しながら引っかかっている。乾燥剤だ。道具を使う猿となんら変わらない絵になることは承知で、近くにあった箸でつまみだそうとするが、その錠剤の引きこもりをやめさせるには私の箸力不足だった。「ううむ、くやしい。残すは、水攻めか~。」というところで、今これを書いている。
そうそう、ひっかかりと言えば、唐辛子を持ち帰った日の前日、ものすごくショッキングでホラーなひっかかりに遭遇している。こども農園の参加者(私はサポーターという名のおまけ)と、ぞろぞろ歩いている時のこと。果樹園のまわりの細かい目のネットに、多数の(点々どころではない)ハエやハチが突き刺さって干からびているのを誰かが見つけて教えてくれた。おそらく異常気象とかと関連づけるとなんらかの仮説が立てられそうだが、紙面にも限りがあるので、ひとまず「うわ~、びっくり!」で手を打つことにする。
見ていた大人の一人が言った。「こいつら、みんな胴の同じところで、ひっかかっているんだよね~。」確かにメタボでなければ、と我が身を呪った個体もいただろう。ムネンだったろうなあ。
2日間続けて、ひっかかりに関わる現象を目の当たりにした。これは決して偶然ではない。かくいう私は、「この原稿、しばらく書いてないなあ」と頭に引っかかっていたのだ。当初、狂い咲きや狂い芽吹きがあまりに目について心を痛めていたので、『異常暖秋冬による植物の受難』に関して、書き出していたのだが、思いのほかペンがすすまず、おおいに引っかかっていたのだ。これで、ようやく一つの引っかかりは、解消する。あー、すっきりしたあ。
(2018-12-13)
レモン酒もレモンはひっかかってでてこない。