にのみや どろんこLife
にのみや どろんこLife
蔵門の「にのみや どろんこLife2」

「農ある暮らし」をライフワークにされている蔵門さんに、2016年4月から1年間にわたってコラムをお願いしてきました。
その後しばらくお休みされていたのですが、1年ぶりに再開していただくことになりました。蔵門さん、ありがとうございます!!
楽しみにしていたみなさん、お待たせしました~。(2018年3月)
vol.18「蚊取り線香」
「♪隠しきれない移り香が、いつしかあなたに染み付いたあ~(『天城越え』より」
そうワタクシ時々、蚊取り線香くさい女と煙たがられます。
困ったことに、年々夏が長くなり、一年のうちの半分以上は腰に蚊取り線香をぶら下げて過ごしています。
わかりますかしら。携行タイプのソレ。もう何十年も変わらぬ丸い形の着火式煙発生器です。「今時、虫よけスプレーや電子式でよくね?」とおっしゃる貴方!ダメなんです。一日中、蚊の猛攻に立ち向かう者にとって、それしきの物では、わが身を守り切れません。たとえその姿を見慣れぬ若者の失笑を買ったとしても、その丸いカンカンを手放すことはないでしょう。この世に蚊がいる限り!
あ、ちなみにですが、線香なら何でも、というわけではありません。私は物心ついた時から(嘘です。)K社一筋。若干お手頃価格のA社の香りはどうにもいけません。一度だけ血迷って花の香りの物を買ってしまった時には、我慢に我慢を重ね、使い切るまでに数年を要しました。
あ、ここまで来て重大なことに気が付きました。
「ちがうちがう、今回のテーマは蚊取り線香のつもりじゃなかったんだ!」
ソレに着火するのにいつも持ち歩いているライターのこと、書こうと思ってました。「だのに、何故?」困ったものです。導入部ですっかり燃え尽きてしまいました。
ということで、珍しく「次回のネタはライターです」という予告を残し、今回はどろんこLife必携シリーズ第一弾、蚊取り線香の巻(!)で手を打つことにいたしましょう。タイトルを直し、ファイル名を変更いたしました。
蛇足ですが、ワタクシごとを少々。まれに人に文章を頼まれることがあります。その時の注文で「短文でかまいません」というお言葉。それ、困ります。生産性のない無駄なことをダラダラと書くことに使命を感じている私に、「短文を書けとお~!?(ムキ~!)」となったりします。お気をつけください。
さて、永遠に続くかに見えた、蚊の季節もようやく終わりを迎えそうです。
釣りの世界で『納竿』という言葉がありますが、冬の間、使い残しが湿気らないように私もそろそろ線香の納缶といたしましょう。高い樹上から落としたり誤って踏みつけたりとひどい仕打ちもしましたが、愛用品であることに嘘偽りございません。今年も本当にお世話になりました。
(2020-10-10)
(Photo by m.o)
vol.17「”枯れる"」
サトイモの葉っぱがね。何日も続く酷暑と雨不足のせいで、あちこちの畑で枯れてきました。周りが茶色に変わって、ガサガサと悲しい音を立てながら風に揺れています。
鏡に自分の顔を映すとね。元々、あんまりなかった眼力(メジカラ)が、完全に消失し、肌もタル~んと揺れています。こちらは恐らく、暑さとコロナ禍で心の潤いを失っているせい。鏡の向こうで誰かが言います。「お前はもう、枯れている・・・。」いや~、参りました。
山の木がね。ものすごい勢いで枯れています。軽トラで走り回る数キロ圏内を見回しても、我が家の窓から見える吾妻山の山肌でも、ナラ枯れ病が急速に進んでいるようです。
久しぶりにどろんこLifeの原稿に向かいます。こんな酷暑こそ、背筋も凍るおどろおどろしいネタに乗せ、少しでも涼風をお届けできれば良かったのですが、いかんせんこちらも壊れています。「どよ~ん」の連鎖を招く「枯れる」三連発の書き出しとあいなりました。
ところで、昨年のこの場で書いたカブトムシネタ、覚えてますでしょうか?
「今年はもう飼わない」と言っていたのに、懲りずに一匹だけお世話をいたしました。冬、やはりまた畑の堆肥に突き刺したスコップで掘り出してしまった幼虫が、それはもうものすごく大きかったわけでして。「これはきっとヘラクレスオオカブトに違いない。やったあ、自慢できるぞ~!」ルンルン鼻歌交じりに持ち帰りました。コロナ禍の自粛期間もこの飼育箱で気を紛らわせ、気が付くと半年以上の月日を一つ屋根の下で、共に暮らしてまいりました。
もしかしたら、羽化を忘れ、土中でミイラ化してるんじゃあるまいかと、案じはじめた7月下旬、当初の期待を大きく裏切り、小型のオスが漸く顔を出しました。そしておまけに、すぐにひっくり返る。自分では起きあがれない弱っちカブトムシでありました。とにかく、山に送り届けるまではと、昨年の残りの昆虫ゼリーをちゃんこ状態で与え続け、体力をつけさせる日々。
そんなこんなで、無事、8月のあたまに畑の栗の木に乗せてやるという別れの儀式を行いました。案じた通り、その“弱っち”は後ずさりして樹上から降りようとする始末。こんなんで、あとひと月の余生を森で過ごせるのかと心配して見守ること数分。ちゃんと入るのですね。野生のスイッチ。人(虫)が変わったかのように、グングン幹を鷲づかみして天を目指して登り始めるではありませんか。その背中には限られた命を生きる強さがみなぎっていました。その姿を見ながら、面倒くさいけど、飼ってよかった。「感動を残していきやがったぜっ!」
やがて、栗の木のてっぺんに達し、初めてその羽を広げ森へ帰っていきました。めでたしめでたし。としたいところなんですが・・。ちょっと、まてよ。カブトムシのご飯はクヌギ、コナラ、ミズナラの樹液ではありませんか。で、冒頭のナラ枯れ病の被害はまさに、このナラ属の木なんだよね。
てーことは、これからカブトムシも生きられなくなる。
ちょっとアトダシですが、夏休みの宿題です。ナラ枯れ病について、ちょっと考えてみませんか?犯人は、キクイムシです!なんていう単純なわけはなくって、もっとかなり複雑。で、できることなら、山で木が枯れている景色を見て、その不自然さ異様さに気づいてほしい。情報過多のせいか感度が落ち気味の「ん?何か変だぞ?」センサー。みんなで持ち続けたいなあと思います。
憂うことが山のようにある今日この頃ですが、いつも力をもらう自然が壊れたら、いつかは自分も枯死してしまう。どろんこLifeが一日でも長く続けられますように。
(2020-8-21)
バックナンバーはこちらからお読みいただけます
<にのみや どろんこLife2>
vol.16「いわくつき野菜のすすめ」
vol.15「勝手に生えてる野菜の生命力」
vol.14「嵐の前の、春の日に」
vol.13「風邪っぴき」
vol.12「恩返し」
vol.11「実験!自然農法」
vol.10「三月のホタル」
vol.9「休眠期」
vol.8「ひっかかっているもの」
vol.7「どろんこLifeの始まり」
vol.6「イノシシ」
vol.5「きゅうり」
vol.4「わかりやすい顔」
vol.3「畑に向かう理由」
vol.2「“こぶし”とり」
vol.1「再びペンをとる」
<にのみや どろんこLife>
vol.15「さくら暦」
vol.14 「味噌の仕込み」
vol.13「佐島のわかめ」
番外編「パッションフルーツ その後」
vol.12 「ウコンのほりあげ」